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木とともに暮らす日々Woody Days

アートと文学のマリアージュ

取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介

春のそよかぜが気持ちいい4月某日。

東武東上線若葉駅から歩いて15分。 駅から少し離れた閑静な住宅街。

桜の季節に似つかわしい、やわらかなクリームピンク色のお家があった。
あたたかな優しい風合いの漆喰壁。 無造作に並べられたテラコッタの陶器。
小窓の花壇には白いゼラニウムの花が咲く。

埼玉県鶴ヶ島市にある、山田さんの家だ。

ご主人の敏弘(としひろ)さん、奥様の順子(じゅんこ)さんに、 順子さんのお父様の稔(みのる)さん、お母様の安子(やすこ)さんの4人家族。
その日は、甥っ子の龍己(りゅうき)君も遊びに来ていました。

ご主人の敏弘さんは、金融業界や不動産業界を中心にシステム構築を行うシステムエンジニア。柔らかな物腰で、自然体な敏弘さん。優しい笑顔が印象的だ。

一方、奥様の順子さんは芸術家肌なお方。アートや文学に造詣が深く、大学では芸術学を学ばれていたそう。異国情緒溢れるクリームピンク色の外観を始め、スタイリッシュに設えられたインテリア・コーディネートは、全て順子さんが行なったのだとか。
まずは気になる外観。どうしてこのような色に?

「映画を観たことがきっかけですね。ドキュメンタリー映画を観るのが趣味なんです。この家を建てる少し前、『ディオールと私』を観にいきました。クリスチャン・ディオールの新任デザイナーに就任したラフ・シモンズ本人のドキュメンタリーです。その映画でシモンズがクリスチャン・ディオールの生家に訪れるシーンがあったのですが。とにかくすごく綺麗なピンク色の外観だったんです!なんとも言えない独特の風合いに惹かれて、我が家にも取り入れようと思いました」

クリスチャン・ディオールの生家にインスピレーションが湧いて実現した外観。エピソードからも、順子さんの豊かな感性が伝わってきます。ちなみにこの漆喰の独特な風合い、自然素材だけで調合されているからこそ実現した色なのだとか。温かみがあって素敵ですね。

一方、お家の中で印象的なのが、大小の本棚。所せましと本が収められています。
文庫本や古書、美術系の図録や少年漫画、少女漫画に至るまで、多種多様なジャンルが網羅されています。家にあるのは99%順子さんの本とのこと。

その中でもひときわ目立ったのが村上春樹の本の数々。文庫本のみならず、ハードカバー、年代ごとにまとめられた愛蔵版までありました。

「ごらんの通り、同じ本を何冊も持っているんです・・・。出かけたときに村上春樹を読みたくなると、ついつい買ってしまいますね」

熱烈なファンなんですね。ちなみにいつから読んでいるのですか?

「小学生の時からずっとファンです。好きになったのは、『村上朝日堂』というエッセイ集。すごく面白くて、それを読んだのがきっかけですね。それから、小説も読むようになりました。何回も、何回も、繰り返し読んで、それでも年を経るごとに感じ方が変わっていくのが面白いなぁと思います」

村上春樹さんの作品で、一番好きなのはなんですか?

「一番って、難しいなぁ…。全部面白いですけど、まだ読んでいない人へおすすめするなら、『ねじまき鳥クロニクル』です。純粋にいつまでたっても好きなのは、『羊を巡る冒険』。何度読んでも飽きません」

同じ作品も、繰り返し読むことで、また感じ方が変わっていく─。
そんな順子さんの感性があるからこそ、このような愛らしくも素敵な住まいが実現しているのかな。

お家を見渡すと、村上春樹の本と同じくらい、目を惹きつけたのが、リビングに飾られていた馬のインテリアコレクション。ユニークですね!

「馬の『かたち』が好きなんです!フォルムがとても美しいなと思いますね。なかなか気にいるものは少ないですが、いいと思ったものを少しずつ集めています」

一つひとつの雑貨や本の飾り方にも、こだわりを感じます。

「雑貨好きは、もしかしたらお母さんゆずりかもしれません。綺麗に何もない空間より、ごちゃごちゃした空間がスキです!」

青いガラスの花瓶 ©鈴木玄太

そのほか、順子さんの感性がキラリと輝いていた場所の一つが、お手洗いだった。

「家の中も外も基本的にはシンプルな漆喰の壁ですが、女性ならやっぱりかわいらしいお部屋には憧れがありますよね。そんな空間を一つは作りたいなぁと思っていました」

濃いグリーンが基調のリバティ柄の壁紙。イギリスのファブリックブランドであるウィリアム・モリス社製のものなんだそう。おとぎの世界を描いた絵本の1ページのようです。独特の色使いに心惹かれますね。

こんな風にワクワクするアートに溢れた山田さんのお家。Yutakaから家が引き渡されたのは、ちょうど3ヶ月ほど前。

引き渡し後、敏弘さんが最初に着手したのは、外構づくりだった。

「家を建てるところまではYutakaさんでやってもらいまして、さて、家の周りはどうしようかと。それで、レンガの通路を作ったらいいんじゃないかという話になり、私が担当することになりました。正直最初は大変そうだなぁと思いました(笑) でも、やってみると意外とこれが楽しい!通路はやわらかい土だったので、まずは土台を固めるところから始める必要がありました。まだこれからですが、休日の楽しみの一つになりましたね」

レンガでできた手作り通路、味わいがあってすごくいいですね!
お庭の周りの草木もかわいらしいですね。

「手入れは妻と一緒にやっています。ただ、草花のチョイスは妻にお任せしています。まだまだ数も少なく、ほとんど植えたてで小さいものばかりですが、これからの成長がたのしみですね」

一方、順子さんが新しい家になってから最初に取り組んだのは、薪ストーブの火入れだとか!

「鶴ヶ島市周辺は、山から吹き降りてくる冷たい風『秩父おろし』がずっと吹いていて、常に乾燥しているんです。川が無いので、なおさらですね。そこで、自分の肌なじみがよいものを選ぼうと思い、薪ストーブを導入しました。家は気密性が高いので冬でも過ごしやすいですが、ヌクヌクとした温かさが欲しいなと思い、薪ストーブで暖をとることにしたんです。薪を入れすぎると暑くなるので、ちょうどよい温もりが感じられる薪の適量を探しました」

薪ストーブの火入れができるなんて、なんとも頼もしいですね。

「今では、火入れのコツはだいたい掴めるようになりましたね!薪ストーブだと、家中がじんわりポカポカ。夜は、ふとんをかけて眠れないくらいでした。2月の時点で、冬ぶとんはしまっちゃいましたね」

「この薪ストーブ、実は料理用の段がありまして、お肉やお魚、グラタンなどを作る事もできるんです。グラタンをこの前食べてみたのですが、薪ストーブを使うとあっという間に焼き上がりますね。美味しかった!冬になったら、電子調理器は使わず、薪ストーブのオーブンだけで料理するのも楽しそう!」

薪ストーブで料理したごはん。一味も二味も違ってくるんだろうな。熱々に焼き上がったお手製グラタン、是非食べてみたいです。一方、敏弘さんは、

「家の周囲は雑木林が多い。最近ではそこに生えている木々が、ストーブの薪に適した樹種なのかという観点で見るようになりました。分けてもらえるかわかりませんが、エネルギー源が地元にあるのはとてもいいことですね!」

順子さん、敏弘さん、初めての薪ストーブとの出会いに、ワクワクでいっぱいですね。薪ストーブでの料理づくりや燃料集め。使いこむほどに新しい発見がありそうです。

こんな風に、きらきらした発見に満ち溢れた山田さんのお家。
家探しが本格的に始まったのはちょうど2年ほど前、着手したのは敏弘さんだったと言う。
順子さんや順子さんの母・安子さんが化学物質に敏感な体質だったことを思い、自然素材をキーワードに工務店やメーカーを探したのだそうです。途中から、順子さんも一緒に家探しをしました。

「自然素材を採用している工務店さんの中で良さそうだなと感じたところには、主人と一緒に足を運びました。それぞれ良いところがあって、からだに優しいお家を手がけているんだなというのはわかりました。ただし、『デザイン性』という観点からは、ピンとくる工務店さんは少なかったように思います」

デザインに対する譲れない想いがあった順子さん。そんなとき、たまたまYutakaのホームページを発見して、感じるものがあったと言う。

「なんとなくですが、ここなら任せられるかもしれないと思いました。ピンときたと言うか。まだ会う前なので、不安もありましたが」

初めてYutakaの人々に会った時の印象はどうだったのだろう。

「まずはYutakaさんが開いている住まい教室に参加しました。そこで安食社長、岩澤さん、棟梁の保さんと初めてお会いしました。住まい教室なのに、大工の棟梁さんも参加しているということが、ユニークで面白いなと思いましたね。当時、私たちはどういう家にしたいか、イメージが固まっていませんでしたが、安食さんは、『まずは一緒に考えていきましょう!』とおっしゃってくれました。自分たちのやり方、考え方を押しつけない。私たちの要望に一つひとつ向き合ってくれる。それがYutakaさんでしたね」

住まい教室に参加し、しばらくしてからYutakaとの打ち合わせが始まった。 が、設計図の完成までは、実に1年もの歳月を費やしたと言う。

「今までのお客さんの中で一番手直ししたと言われました・・・ (笑) 最初は、寝室が1階だったり、外にサンルームを作るなんて案もあったり。家のかたちも、最初の構想とは全然ちがう形に落ち着きました。あらゆる可能性を探りましたね」

とは、順子さん。設計を担当したという岩澤さんにはどんな印象を抱いたのだろう。

「私たちの話に、とにかく前向きに付き合ってくれて嬉しかったです。どんな家にしようか、なかなか設計図が決まらないときも、励ましてもらいながら、なんとか進めていけました。打ち合わせでは、私たちの想いをかたちにしていく作業でした。が、岩澤さんも、私たちの家のことを真剣に考えてくださり、さまざまな提案をしてくださいました。ちょっとしたことですが、この手すりの隙間、なんで空いているかわかりますか?」

「これは、岩澤さんの提案なんです。手すり部分にすき間を入れることで、階段にある窓からも光が差しこむようになるんです。部屋の広さの感じ方と明るさが少し違ってきますね。このようなことは、素人だとなかなか気づきませんね・・・!」

順子さんは、続けてこう話す。

「『木のいのち、木のこころ』という本をご存知ですか。法隆寺の大工さんの本ですが、岩澤さんもその本をご存知で。樹齢1000年、2000年の木で、その土地や風土にあった木を使えば、1000年、2000年もつ家が建つ。『適材適所』とは、まさにこのことを言うのだそうです。たとえば、南方に生えていた木は家の南向きの面に使うのだそうですね。私たちの家においては、秩父おろしが吹いてくる方角や、ベストな“家の向き”までも考慮してくださいました。他の家と同じ向きではなく、“この地形だと、斜め向きの方が、この家にとっていいんですがね”なんておっしゃっていました。家の向きから使う材木、ちょっとした採光のことまで、緻密なレベルにまで落としこんで考えてくれる。すごいなぁと思いました」

順子さんの母・安子さんには、Yutakaの大工たちの印象を聞いてみた。

「年齢は若い大工さんもいましたが、皆さん、本当にしっかりやってくれたと思います」

「天井の梁(はり)の部分が気に入っています。いいですね」

とは、順子さんの父・稔さん。なんだかとっても嬉しそうだ。
最後に、この家で楽しみにしていることなどについて聞いてみた。 敏弘さんは、

「家の周りの緑が増えて、すくすく育っていけば素敵な家になるんだろうなというイメージが湧きます。まだまだ植えたてですが、草木をどんどん育てていきたいです。これからレンガの通路をもっと整えたり、ストーブの燃料さがしなど、やることがいっぱいですが。全部ひっくるめて楽しみですね」

レンガの通路、完成が楽しみだなぁ。どんな仕上がりになるのだろう。 順子さんは、

「お庭の土が見えないくらい、家の周りをもしゃもしゃさせたいです!近頃、素敵な枝ぶりのコブシの若葉がたくさん生えてきて、とてもキレイです。春先のミツマタの花も愛らしい。ブンゲンストウヒ(白っぽい葉のモミの木)の成長も楽しみ。ピンクのお家なので、それに映えそうな、アジサイやラベンダーなど、紫のお花も咲かせたいですね」

もしゃもしゃと茂るお庭、クリームピンクのお家に似合いそうだなぁ。草木が元気に育ってくれるといいですね。最後に安子さんも。

「ただただ、みんなで楽しく、穏やかに生活していければ嬉しい。この家なら実現できそうですね」

(2016/4/10 取材・執筆/それからデザイン)

山田邸 DATA

所在地 埼玉県鶴ヶ島市
お引き渡し日 2016年1月
家族構成 夫婦+両親(二世帯)
こだわりワード オール国産材、薪ストーブ、漆喰、二世帯

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