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Woody Days

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木とともに暮らす日々Woody Days

ぶどう棚とコットンと羊と

取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介

「メェ〜〜」
「?!」

どこからともなく、羊の鳴き声が聞こえてきた。大通りから一本入った畑の脇のあぜ道を通り抜けていく。緑がゆたかに生い茂る田園。緩やかな曲線を描く山々を臨む。

杉板の外壁が、空に美しいコントラスト描き出す家が見えてきた。齋藤さん邸だった。羊はこのお家のサツキの声だった。

深呼吸したくなる。なんとも言えないおいしい空気が満ちていた。

新狭山駅から歩いて20分ばかり。駅の喧騒から少し離れたところに齋藤邸がある。
ご主人の正宏(まさひろ)さん、奥様の美香(みか)さん、長男の潤(じゅん)くん、長女の絹乃(きの)ちゃん、次男の宏丞(こうすけ)くん、そして羊のサツキ。人が5、羊が1の6人家族。

正宏さんは、鉄道会社に勤務する技術職。電車を快適に走らせるため、マシンを操縦して線路を整える、縁の下の力持ち的なすごいお仕事。
包み込むような、温かい空気感を持つ齋藤家の大黒柱である。

そんな正宏さん、ここに家を構えようと思ったキッカケが、

「庭にぶどう棚を作りたいと思ったんです」

なんともワクワクするような興味深いお話ではありませんか。
庭には、自由気ままに脈を広げるぶどう棚がもりもりと育っている。ヨーロッパ産のぶどう種のため生育が難しい。四苦八苦しているところなんだと、はにかみながら語ってくれた。一筋縄ではいかないところも面白いんだろうなぁ。

最近では、どっぷりと軒先の庭仕事にもはまっている。
つややかに丸々と実った茄子や、旬を迎える栗の木。青々と茂る名も無き草花。自分の庭で刻々と変化を遂げる自然の景色に心を奪われているのでしょう。

羊のサツキの世話は潤くんと、こうすけくんの仕事。はじめてサツキがやってきたときは一晩を小屋で一緒に過ごしたのだとか。

一方奥様の美香さんは、育ち盛りの3人の子供を育てる良きお母さん。
自然と寄り添う、木の家のコンセプトを最初に打ち出していったのも、実は美香さんだったりする。環境負荷の少ないサスティナブルな暮らし方を追求し、日々の生活にもふんだんに取り入れている。コットンや羊毛を使った紡ぎごとがライフワークだ。

「昔から、“イチからモノ作り”をすることに大きな関心があったんです。 10代の頃は、ケーキ屋さんやパン屋さんになりたかった。実際にパン屋さんで働いていたときも、関心事は酵母を育てたり、小麦を育てることだったり。昔から自給自足の暮らしに憧れていました」

酵母や小麦を育てるところからパンを作ろうなんて、そうそう思いつかないこと。木の無垢の家に住むキッカケは、奥様オリジナルの感性がルーツになっていたことは間違いないだろう。
一方、コットンや羊毛による紡ぎごとがライフワークになったきっかけは、

「衣・食・住の中でも、『衣』である“着るものの自給”は、最も実現しにくいもの。だからこそ、それを取り戻せたら面白いのではないかと思って。イチから着るものを自分の手で生み出す。そうして興味を持ったのがコットン(綿)だったんです。」

庭には旬のコットンが植えられており、ちょうど実が弾けているところだった。白くてふわふわ、福々と実る様子は、生命の息吹を感じさせた。
美香さんは羊毛にも関心があり、羊毛の紡ぎも行うようになった。羊のサツキがキッカケだったのかな。今では幼稚園や保育園の子どもたちのために毛刈りから制作までを行うワークショップの講師をおこなったり、活躍のフィールドを広げている。

そんな齋藤さんご一家は、Yutakaの家で暮らし始めてから今年で4年。実はYutakaの家に住まう前も、別の場所にマイホームを持っていた。

「一軒目の家は、普通のきれいな家でした。」
いわゆる売建て、Yutakaの家とは真逆のお家だった。住んでいた時は、

「冬場が特に辛かった。無垢の床ではなく、普通のフローリングでした。朝起きた時、寒くてつま先じゃないと歩けないくらい」

外の寒さから守ってくれるはずの家が、快適性を損なっていた。10年、20年と暮していくのにはしんどい家だと思い、思い切って売却することに決めたのだ。
リーマン・ショックの煽りを受け、売却までには5年もの歳月を費やした。売却が決まるまでの間はアパート暮らしをしていたが、そんな中で美香さんが不調を訴えるようになった。

「具合が悪くなっていったんです。化学物質や香水にアレルギー反応を起こすようになってしまって」

意外なキッカケだった。自分の身体から発せられる叫び。
“気持よく暮らしていく”という思いや、10代の頃から思い描いていた“自然に寄り添い、環境への負荷が少ない生き方”といったことを家作りのアイデンティティの中心に考えるようになった。

どうしたら、自分や家族が健やかに、心豊かに暮らしていく事ができるだろうか。

想いを実現するために、一つひとつの物事を丁寧に考える。
一歩進んで、一歩戻って。そして自分達なりの答えを導き出していく。

その一つひとつのプロセスや答えが、この家に流れるおいしい空気を作っていったのだろう。齋藤さんご一家が自分たちの家づくりにかけた情熱とこだわりは並々ならぬものだ。それにそっと手を差し伸べたのがYutakaだった。

「Yutakaの安食社長の第一印象は、“熱くて真面目な人”。なんでも言い合えるし、何でもまっすぐに返ってくる。私達の要望を受け入れるだけではなくて、ちゃんと考えて、ちゃんとYutakaなりのベストな答えも返ってくる。それが、とても心地よかったし、他所では無いことでした」

また、齋藤さん一家は国産材にこだわりを持っていたが、別の工務店では、強度の問題で、大きな梁の部分については、アメリカ産のマツを使わないと家を建てられないと、最初から否定されたこともあったとか。
Yutakaは、ふたつ返事で、強度の高い国産材を調達したそうだ。全て国産の材木から作られた、願ってもない理想の家になった。

齋藤邸は、家族のみんなの誇りであり、愛おしい場所。
庭にもりもりと育つ草花も、家を通り抜ける風も、軒先の草をほおばる羊のサツキも。
人間と動物、自然とがそれぞれに自分らしく、いきいきと共存した、とってもごきげんな家なのだ。

正宏さんが今後、この家でやっていきたいことは、“ぶどう棚に実をつけること”。
美味しい果実をみんなで頬張れたら、とっても感動するだろうなぁ。どんな味がするのか、楽しみですね。

「まだまだ余っている部分があるので、そこを牧草にしたいです」
とは、美香さん。羊のサツキのお友達も増えていくのかな。喜ぶだろうな。美香さんらしい、素敵な夢、実現するといいですね。

長男の潤くんには、“将来の夢”について聞いてみた。

「いわゆる普通のオフィースワーカーではなく、自然に関わる仕事したいです」

山の仕事もいいし、国立公園のレンジャー、理科が得意で大学で勉強を進めていって研究員になるのもいいし。純粋でまっすぐな瞳の潤くんは、夢がいっぱいで、本当に嬉しそうだった。

次男のこうすけくんにも、将来の夢を聞いたところ“羊飼い”になることだと、ニコニコはにかみながら教えてくれました。

「最近はこうちゃんと一緒に、どういう羊飼いになろうか、打ち合わせをしているんです。羊のミルクからカッテージチーズを作って、そのチーズを使ったチーズケーキ屋さんがいいかもねぇって話しています」

このお家で、家族みんなのキラキラした夢が叶いますように。

(2015/9/27 取材・執筆/それからデザイン)

齋藤邸 DATA

所在地埼玉県狭山市
お引き渡し日2011年1月
家族構成夫婦+子供3人+羊
こだわりワードオール国産材、深呼吸したくなる家、ぶどう棚、薪ストーブ、二世帯

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