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木とともに暮らす日々Woody Days

自然と生き物と、家族の物語

企画/それからデザイン 執筆・写真/磯木淳寛

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同じ季節でも、都心で感じる太陽の陽射しと、山や川のある場所でのそれとでは感じ方がずいぶん違う。
体感で知っているその心地よさを暮らしに求めていくのは、自然なことかもしれない。

西元將洋さん、華菜さん、娘の一華(いちか)ちゃん、息子の一織(いおり)くんの家族が飯能に家を建て、暮らし始めたのは2023年初夏のこと。

都内の建設コンサルティング会社に週の半分ほど出社し、残りの半分は自宅で仕事している將洋さん。高層建築物を開発する際の環境面での影響を調査予測し、報告書を作成するのが主な業務内容だ。華菜さんは引越し前から勤める、自宅から電車で30分程度の小売店で働いている。

西元さんのおうちに着くと、「軒先で巣作りを始めたツバメがちょうど今来ているところなんです」と教えてくれた。せわしくエサを運んで巣を行き来する親ツバメと、口を大きく開けて待つ子ツバメ。住まいの目の前で躍動感ある生き物観察ができるのもこの環境ならでは。

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「娘は毎朝起きてきたら窓を開けて観察しています。去年もこの軒下に来ていたので今年はどうかなと思っていたら全く同じところに巣を作ってくれて。動物と言えば、私と娘が夜に和室にいたときに、ふとロールスクリーンを上げたら窓の外にフクロウがいたこともありました。それくらい自然豊かなところなので親子で楽しんでいます」

「たぬきみたいな小動物がすぐそこで穴を掘っていたこともあったよね」

將洋さんも子どものころは生き物が好きで、そこから環境分野に関心を持ったという。
大学で環境分野を学んで大学院に進み、現在の会社に就職した。

「子どもの頃はカマキリを捕まえて育てたりしていましたね。当時の実家はマンションだったのでペットを飼いたい思いはあったんですけど残念ながら叶わず。それもあって昆虫を育てていました」

飛び回ることに疲れたのか、親ツバメが巣で羽を休めていた。が、それも束の間。子ツバメにせかされるようにしてエサを調達するべく、またすぐに飛び立っていった。一織くんが機嫌良さそうに將洋さんの腕に抱かれている。

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將洋さんと華菜さんはふたりとも大阪生まれ、大阪育ち。
年齢は4歳離れているものの、出身中学校も同じ。子どもの頃から同じ生活圏で過ごしてきたが、ふたりの初めての接点は、將洋さんが大学院生、華菜さんが短大生の頃。同じアルバイト先のスタッフとしてだった。

「仲良くなったきっかけはアルバイト先からの帰り道が同じだったことですね。お互いちょうど就職活動の時期で共通の話題もあって仲良くなっていきましたね」

まもなく付き合い始めたふたりだったが、將洋さんが東京の会社に就職することが決まり、続いて華菜さんも大阪で就職。関西で一緒にいられた期間はわずか半年間程度で、東京と大阪との遠距離恋愛が始まることになった。

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「お互い就職してからは休日もなかなか合わせにくかったんですが、お互いの長期休みの期間をうまく合わせたりしながら行き来していました」

そんな生活が2年間続いた頃、華菜さんの誕生日に合わせて東京で会うことになったふたり。華菜さんのリクエストで横浜のベイエリアで遊んだあと、將洋さんが予約していた大観覧車の見えるホテルの部屋でディナーを食べていた。華菜さんはこのときの事を回想して「薄々予感はしてた」と微笑む。

「妻と結婚しようと思った決め手は、お互い新社会人で忙しい中、遠距離でもうまくやっていけたことで、今後もしなにかあっても一緒に乗り越えていけるんじゃないかなと思ったことですね。ズルズルと時間ばかり経って彼女を待たせてしまっても良くないなとも思っていましたし」

「プロポーズをもらって、正直こんなに早いかと驚いたところはあるんですが、何を相談しても答えてくれるし、私のわがままにも付き合ってくれるし、こんな人はもう現れないなとずっと思っていたので、お受けさせていただきました(笑)」

華菜さんは將洋さんのことを「包容力があって、お兄ちゃんのような存在」と言う。実際、將洋さんは3人兄弟の長男で、年の離れた弟と妹がいる“お兄ちゃん”。「小さい頃からお兄ちゃんっていうポジションが板についているのかもしれないです」と笑う。

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結婚したのは將洋さん26歳、華菜さん22歳の時だった。
華菜さんの会社は全国に店舗があったため、勤務先を変えることなく東京でのふたり暮らしは始まった。結婚から2年後には子宝にも恵まれ、長女の一華ちゃんが誕生。東京での暮らしにも慣れてはきていたものの、この頃は華菜さんは生まれ育った関西で暮らすことをまだ諦めていなかった。

「もともと本当はあまり東京には行きたくなくて、最初は2020年には関西に帰ろうねっていう約束だったんです。関西が恋しくて、東京に来たばかりの頃は周りに友達もいなくて寂しいし、最初の1ヶ月は謎の咳みたいのが出て毎晩泣いていたくらいです」

「妻は関西に帰りたがっていたのですが、私は勤めている会社が東京にしかないので、関西に帰るなら転職も考えなくてはいけない状況でした。そんなタイミングで2020年にコロナ禍になり、仕事がフルリモートになったんです」

將洋さんは会社に「関西に引っ越してフルリモートで働いてもいいですか?」と尋ねた。すると、それまでの仕事ぶりも評価されていたためか、「やってみてもいいよ」という返事をもらった。このことを華菜さんにも話し、関西への引越しが現実味を帯びてきた。ところが、関西の父母や祖母にも相談していたところ、華菜さんのお父さんが「もう嫁いでいるのにお前のわがままで関西に帰ってくるというのはいかがなものか」と華菜さんを諭した。

「言われてみるとたしかにそうだよなと思って。それに、娘が保育園に行くようになって周りとの関わりができてくると、関東の方が教育環境は充実しているように感じ始めたんです。それで考え直して」

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紆余曲折あったものの、家族は関東で暮らしていくことを改めて決めた。おうちのなかでは関西弁だというふたりだが、すっかり標準語が馴染み、関西人に見えないと言われることも多い。

「子どもの幼稚園が標準語なので普段は標準語で話すんですが、時々すごい変なエセ関西弁を話すことがあります(笑)」

さっきまでご機嫌だった一織くんが、抱っこをせがんで床で感情を爆発させていた。顔を赤くして大粒の涙を流している。華菜さんが抱き上げると、嘘のように泣き止んで屈託のない笑顔を見せる。

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マイホームを検討し始めたのは、その一織くんの妊娠がわかった頃。
子どもふたりをのびのび育てたかったし、引越しによって子どもを転校させてしまうことも無くなると考えたからだ。今ではふたりの目論み通り、子どもたちは新居で気兼ねなく走り回っている。

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当時は和光市に住んでいたため、夫婦ふたりの勤務先へのアクセスを考慮し、同じ埼玉県内の西武線が使えるエリアで探し始めた。そのタイミングでたまたま見たテレビの旅番組で飯能を知り、豊かな自然のなかでの暮らしに興味を惹かれていく。

「Yutakaの完成見学会に参加して、そのあと市役所経由でいくつか土地を紹介してもらったんですけど、私はここでお家を建てたい!とビビッときて(笑)。目の前に山と梅林があって景色も良かったし、採れた梅で将来梅干しを作りたいっていうイメージが膨らみました」

やがて、最初の問い合わせから1年半を待たずして新居が完成。決断が早いのが將洋さんらしい。

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洗面所の大きな窓の向こうで、梅の木の緑が陽射しを浴びて輝いていた。鏡ではなく窓を取り付けたのは華菜さんのリクエスト。春には新緑と梅の花、6月頃には梅の実が成り、季節を感じられる。

「洗面所のほかにキッチンもお気に入りです。タイルを白くしてカフェの厨房風にしたり、冷蔵庫とかはあまり見せたくなかったのでパントリーのなかに入れられるようにしてすっきりさせました。玄関も広さを確保して、窓をつけて明るくして、冬の帰宅時にもすぐにコートをかけられるように収納を作りました。叶えたいことを夢ノートにたくさん書いたんですが、一番力を入れたのはやっぱりリビング。家族が1年中リビングに集まる家にしたくて」

西元さんのおうちは、二階への階段を玄関すぐの場所ではなく、リビングを必ず通る場所に作った。また、どこからでもリビングに行けるように一階は回遊動線にして、ぐるっとひと回りできるようにした。一華ちゃんの勉強スペースも階段の裏側にあり、わからないことがあったらすぐにヘルプできる。

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「私のお気に入りもやっぱりリビング。吹き抜けにしたのも妻の希望で、私は最初は反対だったんですけど結果として良かったですね。私は環境の仕事をしているので自然エネルギーを生かしたくて、パッシブソーラーという空調システムを入れたんです。外気を取り入れながら家全体の空気を循環させるもので、エネルギー効率を良くしつつ快適に過ごせます。夢ノートに書いた私の希望はそれひとつだけです(笑)」

休日の朝には將洋さんが淹れてくれたコーヒーを傍らに、リビングで過ごす。天気が良ければ外で家庭菜園をして公園に行ったり、天気が悪ければみんなでディズニーの動画を見る。

幼い頃に祖父母のやっていた家庭菜園で土に触れ合っていた華菜さん。華菜さんと一緒に野菜に水やりする一華ちゃんにとっても、この時間はきっと大切な記憶になっていく。

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ところで將洋さん、子どもの頃に飼いたかったというペットは?

「今は子どもが小さいのでまだもう少し先かなと思ってますが、一軒家だと飼えるので今後考えてみたいですね」

「娘は猫を飼いたいと言っていて、私は実家で犬を飼っていたので、ゆくゆくはゴールデンレトリバーとか大型犬を飼ってみたい!」

軒下の親ツバメは、まだせわしく働いていた。
人も、動物も、これからどんな家族の物語が紡がれていくのだろうか。

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(2023/05/19 取材・執筆)

西元邸 DATA

所在地 埼玉県飯能市
お引き渡し日 2023年7月
家族構成 夫婦、子ども2人
こだわりワード 西川材,パッシブソーラー,省エネ住宅,自然風景,景観のよい土地,収納

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