Yutaka

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Woody Days

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木とともに暮らす日々Woody Days

いつかまた、ロックフェス

企画/それからデザイン 執筆・写真/磯木淳寛

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まるで手のひらのようなイロハモミジの葉っぱが、ひらひらと手招きしてくれている。隣地のぶどう棚と緑の借景に囲まれ、ガルバリウム鋼板のシックな外壁が静謐な印象の佐藤さんのおうち。

玄関ドアを開けて、土間からお邪魔させて頂くと、やはりどこか静かな雰囲気。ふとリビングのソファに視線を移すとその理由がすぐにわかった。天使がお昼寝中だったのだ。佐藤史也(ふみや)さんと朝美(あさみ)さんの長女の碧夏(あおか)ちゃんだ。

子どもらしい、たっぷりと湿気を含んだ寝息がこっちまで聞こえてきそうです。

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起き抜けに勢いよくうどんを食べ始めた碧夏ちゃん。今朝、朝美さんと一緒に庭の畑で収穫したズッキーニも今日のプレートの一品だ。
畑スペースはコンパクトながらも本格的。ナスと枝豆も元気に育っている。

「祖母が新潟でずっと農家をやっていたので教わっていて、冬には大根とカブを作りました。今は夏野菜がちょっとずつ採れはじめたところです。想像以上にでっかく育つのが面白いですね」

畑を耕して畝を立てるのは史也さんの仕事。シャベルもクワも、祖母から譲ってもらったものを使っている。

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「最近の趣味はもっぱら畑仕事ですね。元々ロックフェスに行くのがすごく好きなんですが、今は子どもも小さいのでなかなか行けなくて」。史也さんの隣で碧夏ちゃんが クルクルと回っている。
「子どもが大きくなったら一緒に行けたらいいんですけどね」。朝美さんがキッチン越しに言う。

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史也さんと朝美さんは実はふたり揃ってロックフェス好き。出会った当時、最初に意気投合したのも音楽についてだったそう。

「婚活アプリで出会ったんですけど、夫の自己紹介文に書かれていた好きなアーティスト名に、お!って思って」

「ぼくはDragon Ash、10-FEETとか、ロックフェスに出演するようなアーティストが好きで書いてたんですよね」

「私はMAN WITH A MISSION、Fear,andLoathinginLasVegas。私もフェスが大好きで友達とよく行ってて。最初に会ったときもお互いに行ったフェスの話をしたり、実は同じフェスに行っていたことが判明したりもして話が弾みましたね」

じゃあやっぱりその後は一緒にフェスに参戦も?
「はい、当然の流れですね(笑)」

会った時の第一印象もお互いに良かったそう。

「個人的に目がパッチリしている人が好きだったので。ニコニコしてよく笑ってくれたし。それになにより一緒にいて楽でしたね」。はにかむ史也さん。

「趣味も合ったし、話してて楽しいし、無理に気を使わなくてもいい人だなって初めて会ったときから思いました」。やっぱりニコニコする朝美さん。

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波長が合って、出会いから一年経たずに婚姻届けを提出。そのスピード感の理由を、「一緒にドライブしたときとかに、よく子どもが欲しいねってお互いに話してたので、それも大きかったですね」と話します。

結婚して間もなく授かった碧夏ちゃんは、朝美さんゆずりの大きな瞳をきらきらさせて、すっかりご機嫌な様子。

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もうすぐ3歳になる、元気いっぱいの時期。表情も豊かに飛んだり跳ねたり。

「ベッドからジャンプする姿を見てて、“お、ちゃんと体を使えてるな!”と思うこともあります」。体の動かし方について人並み以上の知見を持っている史也さんのお仕事は小学校の教員。専門は体育だという。

「昔から子どもに関わる仕事をしたかったんですよね。というのも子どもの頃、父の仕事の関係で転校をして小学校も3つ通ったんですけど、どの学校も楽しかったしいい担任の先生に巡り合えたという記憶があって」

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転校生だった史也さんが思い出す、大事なエピソードがある。

「小学校低学年のとき、算数の数を数える授業でみんなが卵パックを学校に持参することになっていたんですけど、みんなが持ってきたのは10個入りパックで、ぼくだけがみんなと違う12個入りの卵パック。今にして考えたら大したことじゃないんですけど、そのときは叱られるんじゃないかと思って内心びくびくしていたら、それに気づいたのか担任の先生が“全然大丈夫だよ”って声かけしてくれて。細かいところまで見てケアしてくれる先生だったんだなと思います」

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ほかにも、「小学6年の11月に転校した学校では、卒業まで4ヶ月しか無い中で、担任の先生が写真が少ないぼくのためにわざわざクラスの前で話す場面を作ってくれて、カメラマンまで手配してくれて、その写真を卒業文集に載せてくれたこともあって」

そうした宝物のような思い出を胸に、教員になって十数年。今では学校でも若手から頼られる立場だ。

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「後輩が授業を見学に来たりもしますけど、ぼく自身が“こうした方がいいよ”とは言わないです。後輩には後輩の考え方がありますし“ぼくはこう考えてるけどどうかな?”と投げかけるくらい。それを自分で判断して真似をしてくれてもいいし、しなくてもいいし」

相手を尊重して、相手に考えてもらうというような後輩への接し方は、生徒との接し方でも一貫している。「生徒主体で、自分はあくまでもきっかけ。子ども自身が考える機会が多くなるようにしています」と話す。

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先生のご家庭だということで、聞いてみた。
ご自宅での子育てでも、学校の教員経験は生かされてますか?

「やっぱりできるだけ子どもが“こうしたい”ということに対して応えられる余裕は持っていたいなと思います。もちろん人に迷惑をかけたりするような場合にはそれはいけないよと言わなきゃいけないですけど」

逆に、自分に子どもができたことが教員として仕事をすることにプラスになっていることも多いそう。

「保護者と会話する時に共感し合えることが増えました。昔、生徒の親から“あなたは自分の子どもを育てたことがないでしょ?学校に来ているときの子どもしか見てないんだから”と言われたこともあるし。でも、子どもが朝起きて、ご飯を食べて、学校に来るということだけでも結構すごいことなんですよね。そこまでのさまざまな準備が大変で、親の協力も絶対必要ですし。教員は学校に来た子を集団の中で見るだけだし、担任になったとしてもその子を1年間見るだけ。でも親は一生です。子どもができたことで、自宅での子どもと学校での子どもと両面を知ることができたのは大きいです」

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2階の寝室では、1歳になった長男の飛翠(ひすい)くんが熟睡していた。ふたりの子どもも、この飯能市で大切な時期を過ごしていく。

「飯能市は子育てをするという観点でもいいなと思って。近くの小学校も児童数が少なくて全校で70人くらい。コンパクトでみんなが仲良く育ちそうな雰囲気があって、初めて飯能を見に来た時の印象も良かったですね」

最近では車両から子どもを守るためにボール遊び禁止の公園も都心部には多いが、「飯能の公園はボールをいくら投げても公園の外から出ない」と史也さんが笑う。子どもがのびのびと体を動かせる環境は、親にとってものびのび子育てができそうだ。窓の外のウッドデッキで、碧夏ちゃんがシャボン玉を手で追っている。

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Yutakaとは、飯能で木を使った家を建てる工務店を探していた中で出会った。

「実は他の工務店さんにもお話を聞いたことがあったんですけど、“これだけお金出したらこれができる。でも、これくらいの金額に抑えるとできません”という説明の仕方だった。まあ普通と言えば普通なんですけどね。でも、Yutakaさんは“それ、できますよ!いいですね〜。こうすれば予算内でできます”と、こちらの希望に対してマイナスではなく、プラス、プラスに足し算で話を進めてくれました。“無理”と言われることが無くて、それはすごいなあと今でも思っています」

ふたりが叶いたかった希望って?

「まず広い土間が欲しかったんです。あとは吹き抜け、ウッドデッキ、ウォークインクローゼット。あと事前の見学会で見せていただいたいくつかのお家で母屋の他に離れがあって、何をどう使うかというよりも離れがあるというのがいいなと思って」

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「離れと言えば、家が完成する前に見た、離れの窓からの景色が美しかったんです。窓枠が額縁みたいになってて、写真を飾ってるみたい!ってすごく感動したのを覚えています。今でも娘と離れで遊んでいるときに窓から見えるイロハモミジと向こうのブドウ畑と青空の景色が大好きですね」と朝美さん。窓の向こうでシンボルツリーの上品な葉っぱが涼し気に揺れている。

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実用的な面では、屋根に蓄えられた太陽熱をそのまま床下から室内に送ることで家中を温かくするパッシブソーラーという仕組みを導入したそう。これによって「冬でも天気のいい日はそんなに暖房器具を使わずに済んでいる」と言います。

家の中をどんどん探検するようになってきたという飛翠くんが史也さんに抱かれて、まだ眠たそうにしている。

「子どもが大きくなったら、お友達を呼びやすいようにウェルカムな雰囲気を作りたいですね。彼らができるだけ多くの経験ができるように時間を作っていきたいし、そのためにもぼくらが健康でいなきゃね」

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成長は喜ばしいことだけど、今は幼い子どもたちも、ゆくゆくは家を出て独立していく可能性だってある。そのときはまた、夫婦ふたりだけの暮らしが待っている。そんな夫婦の未来図も史也さんには見えているようで…。

「結婚する前と変わらず、20年後も30年後も人生のステージでお互いの存在が見える感じがします。子ども達が巣立った後にふたりでウッドデッキでコーヒーを飲んでるんだろうなとか、おじさんおばさんになってもロックフェスに一緒に行っている姿も目に浮かびます」

イロハモミジは春から夏にかけてはみずみずしい緑色、やがて黄みがかったのちに、深い赤色に変化する。変化する美しさは、暮らしの彩りを表しているよう。これからも、ずっと家族の物語を見守り続けていくんだろう。

どんな季節のどんな色も、それはきっと鮮やかで美しい。

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(2023/05/20 取材・執筆)

佐藤邸 DATA

所在地 埼玉県飯能市
お引き渡し日 2022年8月
家族構成 夫婦、子ども2人
こだわりワード 西川材,パッシブソーラー,吹き抜け,土間,離れ,畑,本棚

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