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木とともに暮らす日々Woody Days

旅の薫りを感じながら

取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介

うららかな小春日和の陽気が気持ちいい11月某日、埼玉県狭山市までやってきた。
新狭山駅から車を走らせて10分ばかりの場所に、市川(いちかわ)邸がある。
1階は農作業スペース、2階はご夫妻の居住スペース。
入口には、2本のサボテンがかわいらしく植えられていた。

市川さんご家族は悟(さとる)さん、千恵子(ちえこ)さん、生まれて7ヶ月のトイプードル・シンバの3人。
ご主人の悟さんは5年ほど前から農家を生業にしている。もともとご実家の家業が農家だったとのこと。

「大学卒業後、しばらくは営業職のサラリーマンをしていました。サラリーマン時代も悪くはなかったのですが、父や母の影響もあってか“農家”という職業に興味湧き、ふとやってみようと思い立ったんです。最初から強いモチベーションがあったわけではありませんが、5年ほどやってきた今では、合っている仕事かなと思っています」

穏やかな表情で淡々と語る悟さん。子供の頃から野菜が身近にあったのも、農家への転身のキッカケになっているのかもしれません。

「野菜は自分にとって身近なものでした。仕事でつくっている里芋だけでなく、家庭菜園もあるので、ほとんどの野菜はすぐそこで収穫したものを食べています。ピーマン、茄子、トマト、きゅうり、かぶ、大根、キャベツなど…、日常で使う野菜は大概ありますね! 時期によって旬じゃないものだけ買いにいきます」

お家の目の前が家庭菜園とは、なんとも羨ましい! 旬の採れたて野菜、さぞ美味しいんだろうな。千恵子さん、家庭菜園の野菜はどうですか。

「今が旬の大根とかぶは美味しいですね! かぶはあまり買う機会がなかったのですが、お味噌汁にするのが特に美味しいなと思いました。あと、意外だったのがサニーレタスです。 サニーレタスって、今まであまり好きじゃなかったんです。しなしなっとしているイメージがあったのですが、パリパリして食感も味も濃くて美味しいなと思いました。ピーマンなんかもハリがあって肉厚です。例えるならパプリカに似ているかも! とってもジューシーで、今まで食べたことがなくて、野菜ってこんなに違うんだな、面白いなぁと思いました」

パプリカみたいなピーマン、食べてみたいなぁ。美味しそうですね。 悟さんは、思い出の野菜料理なんかあったりするのですか。

「子供の頃の思い出料理といえばシンプルですが『茄子焼き』かなぁ。油を引いて、醤油と生姜で味付けするんです。茄子本来の素朴な味が楽しめて美味しいですよ」

悟さん、農家の合間を縫って長年続けている趣味もあるという。

「小学3年生くらいから今に至るまでずっとサッカーをやっています。地元のサッカーチームに所属していて、川越市のリーグにも参加しています。ポジションはボランチ。長谷部選手や山口蛍選手のようなプレーを目指してやっていますよ(笑) 今も中高の部活の頃の仲間たちとは仲が良くて、その延長線でやっているような感じですかね。若い頃はいいプレーができると嬉しい、シュートが決まって楽しいとか、スポーツとして楽しんでいました。今は、普段なかなか会えない友人たちと会えるきっかけになっていることの方が嬉しいかも…!」

学生時代に知り合って、今でも連絡を取り合う仲間がいるってとても素敵だし、幸せなことですよね。これからもサッカーは悟さんにとって掛け替えのないスポーツとして生き続けるんだろうな。

一方の千恵子さん、ご結婚する前は食品や洗剤など取り扱う消費財メーカーで正社員として働いていたそう。その後、派遣社員時代を経て、この家に引っ越すタイミングで通勤に時間がかかることもあり退職。今では専業主婦としてご主人の悟さんを支えている。笑顔がとってもチャーミングな千恵子さん。このお家に来てから楽しんでいることを聞いてみたい。

「今年の7月から飼い始めたシンバのお散歩が楽しいです。ずっとペット禁止の集合住宅だったのですが、小さい頃から犬を飼うのに憧れていました。犬を飼うならフレンチブルドッグかビーグルがいいなと想像していたのですが、友達から譲り受ける機会があり、トイプードルのシンバを飼うことになりました。可愛くて仕方ないですね~!」

ふわふわのライオンカットが愛らしいシンバ。二人に可愛がられて、とっても幸せそう。元気いっぱいに走り回っていましたよ!

サッカーに愛犬との時間にと、それぞれの楽しみがある悟さん、千恵子さん。そんなお二人、実は共通の趣味があるんだそう。

「二人とも旅行が大好きなんです。私は、正社員時代から国内旅行はもちろん、海外にも年に1度は足を運んでいました」

とは千恵子さん。悟さんも、

「世界一周とか言うと、小恥ずかしいですが(笑)、サラリーマンをやめて1年ほどは南米やアジア、ヨーロッパなど世界各地を巡りました。印象に残っているのはモアイ像があるイースター島。島はのんびりしていていいなぁと思いました」

お二人でも旅行に行ったりするのかな。

「二人でも旅行に行きますよ。いろんな意味で思い出深いのはインドです! 千恵子はインド北東部にいったことがあったので、二人で行くなら西の方に行こうと話していました。インド北西部にはタール砂漠という大きな砂漠があって、そこを旅するラクダツアーに参加したんです。ラクダに乗って砂漠でテント広げて星空を見るという企画で、とても楽しみにしていたんですが、あいにくの雨…。テントがじめじめ、外では野犬がワンワン吠えていて、星空も見えない (笑) 千夜一夜物語のアラビアン・ナイトの世界を想像していましたが、こんなこともよくあります。何が起きるかわからないのが旅の面白さとも言えますね」

とは悟さん。なかなか衝撃的な体験でしたね。二人で笑いあえるなら、それも記憶に残る旅の思い出になりますね。インド北西部の食文化も気になるな。

「インドと言えばカレーですが、日本のカレーとは味も見た目もまるで違いました。ほうれん草、豆、チキン、ココナッツなど、いろいろな種類がありました。ルーは“サラドロ”系というのか…、サラッと見えるけど油の層ができていて実はドロっとしている不思議な食べ物でした。食べたことがない味でしたね! 手間ひまもかかっているのか、注文してから30、40分は料理が出てこないので、きっと注文を受けてからイチから作っているのかも(笑) 何から何まで、日本では体験できないようなことばかりでした…!」

とは千恵子さん。インド北西部のカレー、とても気になる料理ですね。日本ではなかなかお目にかかれないだろうなぁ。
旅の思い出について話が尽きない市川さんご夫妻。その瞬間、その場所、そのタイミングでしか味わえない思い出、いくら時間があっても語り尽くせない様子です。
お二人とも旅好きとのことで、旅行先で得たインスピレーションがお家づくりに生かされていたりするのでしょうか。

「北欧を旅したときに訪れた建築家アルヴァー・アールトさんの旧家がとっても素敵で、強く心に残りました。フィンランドのお家って素敵なんだなと思って。どこかしらに北欧デザインを取り入れたいと思ったので、お手洗いの壁紙にはマリメッコを使いました。ポップな感じがとても気に入っています。そのほか、棚の取っ手に旅の民芸品をあしらったり、タイルを入れてみたり…」

洗面所もスタイリッシュでかわいらしいですね。

「ヨーロッパに行ったときにモザイクタイルを取り入れたお家が素敵だったので、是非使いたいなと思いました。洗面所もお気に入りの場所の一つですね」

旅の思い出がお家中に散りばめられているんだな。一つひとつのちょっとしたインテリアにもこだわりがあって、とっても素敵! 一期一会の旅の民芸品が、このお家に彩りを添えている。
このお家のことについて、もう少し詳しく聞いていきたい。そもそもお二人がお住まいのこちらの建物は1階が作業場で2階が市川さんご夫婦の住居。どうしてこのような作りになっているんだろう。

「当初この建物は、作業場として祖父が建てたものでした。今も1階は作業場として使っていますが、私たちが今住んでいる2階はガランと空いていました。というのも私が結婚することになったらここに住んでほしいと思ったらしく、スペースを空けておいてくれたみたいなんです。祖父がそんなことを考えてくれていたなんて意外でしたし、なんだか嬉しかったですね。2年ほど前にここに住むことを決め、住みやすいようにリフォームすることになりました」

おじいちゃん、孫のことを想って2階建てにしてくれたんだ。優しいなぁ。リフォームすると決めてからはどのように進めていったのかな。

「まずは無垢の木を使ったお家の施工事例がある地元の工務店さんを探しました。4,5社ほど見ましたが、その中で最もいいなと思ったのがYutakaさんでしたね。家づくりのプロセスとしては、気になるお家の写真をスクラップしてイメージをまとめたり、ピンときた言葉を付箋で一覧にして、夫婦で話し合ったりしました」

「話し合いをしていく中で、最後まで残ったキーワードの一つは“だんだん、味が出てくる家”。時間が経つごとに味わいが増してくる経年変化の考え方はいいなぁと思ったんです。キズがついているのが味と思えるなら、それは素敵なことだねって。無垢の床なので、シンバのつけた穴や引っかき傷も味になっていくでしょうね!」

とは千恵子さん。一つひとつの傷も味になり、家族の歴史になる。経年変化を楽しめる家、とってもいいですね! お家づくりのコンセプトなどを始め、基本的なイメージは千恵子さん主導でYutakaの設計担当・岩澤さんに伝えていったそうだ。

「Yutakaさんの設計に対する考え方がとても素敵だと思いました。数社の工務店さんに設計図をお願いしたのですが、Yutakaさんの提案はキラリと光っていましたね。面白いな、すごいなと思ったのは、元々作られた窓の位置や間取りに一切とらわれず、私たちの思い描く希望や住みやすさで設計図をイチから考えてくれたこと。提案はとても斬新でしたね。鉄筋の建物なので、柱なしの大空間にできるというのも他社にはない視点でした。せっかくなので、木造ではできないことをカタチにしましょうって言ってくださったんです。何もない、すっからかんのお家に生命を吹き込んでくれた。楽しそうにやってくれたというのが印象的でしたね」

なるほど。既にある作りにとらわれず、お二人のイメージするライフスタイルに合った提案だったんですね。

「決め手になったのは岩澤さんが描いてくれた色付きの“絵”かな。他の工務店さんがパソコンで描いた設計図だったのでひときわ異色でしたね。なんとも味わいがあって、独特の世界観があって、手描きのパワーが伝わってきました!」

とは悟さん。手描きで仕上げた色つきの設計図を嬉しそうに見せてくれた。色が塗ってあるとよりイメージが湧いてきそう! 印象に残っているYutakaのスタッフがほかにもいると千恵子さんが語ってくれた。

「Yutakaのインテリア担当・高木さんにも大変お世話になりました。高木さんはテキスタイルやファブリック、タイルなどのデザインにお詳しかったので、色使いや見せ方、オススメのメーカーなどを教えてくださいました。とても勉強になりましたね。打ち合わせが長引いたのも楽しい思い出です」

インテリアやデザインなどに関心が高い市川さんご夫妻にとって、充実した打ち合わせだったのでしょうね。こうした話し合いの一つひとつが、この家の心地よさをつくっているんだろうな。 お二人がこの家の中で気に入っている場所も聞いてみたいな。

「なかなか気づかれないポイントかもしれませんが、リビングのテレビ前のスペースにつけた“段差”が気に入っています。一般的な一軒家ではなかなか見られない、エッジの効いた面白さが欲しかったんです。テレビを見るときに、腰掛けて見れるのもいいなぁとも思いました」

フラットな平面の屋内に段差があるとメリハリと立体感が出ていいですね!奥行や広さの感じ方も変わってくるのかな。千恵子さんのお気に入りの場所も聞いてみたい。

「アイランドキッチンが気に入っています。台所とダイニングの間にしつらえたので、ちょっとした作業スペースとして大活躍しています。機能的なところが好きですね」

「あとはちょっとした仕切りとして設けたすりガラスもお気に入りです。Yutakaさんにお願いしてキッチンとリビングの間にすりガラスをはめるスペースをつくってもらいました」

無垢材を基調とした中に、黒枠の窓ガラスがあることでメリハリが出ていいなぁ。無垢のウッディさといい具合に調和して、スタイリッシュでモダンな雰囲気をつくり出している。 こうしてお二人の話を伺っていると、細かなこだわりが随所にちりばめられているのがよくわかります。

「Yutakaさんは私たちの理想を実現すべく、本当によく対応してくださいました。契約を決めたあとも、プランをちょこちょこ手直ししていただいたので、大変だったと思います。無茶なお願いもしたかなって。でもみなさん笑顔で応えてくださった。テレビ前に段差をつけたいというのは鉄筋構造なので難しいことだったようです。しかし岩澤さんは一言、『いいですね! それ、僕も好きです』とおっしゃってくださった…! 大変なことも乗り越えてなんとか実現しようとしてくれたのが、とても嬉しかったです。この家は私たちにとって、かけがえのないお家になりました。心から感謝しています」

最後に、お二人がこの家で楽しみにしていることを聞いてみた。

「この家に越してからまだ使っていないアラジンストーブがあるんです。そのストーブを囲んでワイワイBBQをしたいですね。この家はテラスを広めに取っているので、BBQも存分に楽しめそうです!」

とは悟さん。千恵子さんは

「私はテラスでハーブを育てたいと思っています。なかなか着手できていないですが、ローズマリーなどを育ててピクルスをつくるのも楽しそうですね。夏に家庭菜園で野菜が採れるので、キュウリや人参などを使ってみたいな。今から楽しみです」

テラスでBBQに、自家製ハーブを使ったピクルス作り。
家庭菜園の採れたて野菜が主役になるのかな。
夫婦二人とシンバ、そして心安らぐ友人たちとのひととき。
とびきり美味しく、楽しい時間が過ごせそうですね。

(2016/11/17 取材・執筆/それからデザイン)

市川邸 DATA

所在地 埼玉県狭山市
お引き渡し日 2016年5月
家族構成 夫婦+愛犬1匹
こだわりワード リフォーム,無垢材,漆喰,旅の思い出

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