木とともに暮らす日々
大きなバイクと小さなバイク、ときどきクッキー
取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介
新狭山駅から北西方面。入間川を越え、大通りから逸れた小径を進んでいく。 車を走らせて10分。印象的な外観のお家が見えてきた。
モダンなワインレッドの軒裏、黒のガリバリウムの壁。 その脇には、大小の太さごとに仕分けられた蒔が積み上がっている。 背後に生い茂る常盤色の雑木林とよく似合う。
近づくと、男の子が小さなバイクで駆け出してきた!
この家は佐久間邸だ。そして男の子は、この家に住むあずとくん。
初夏の風が気持ち良い、すこぶる快晴な日だった。
佐久間さんご一家は、敦(あつし)さん、藍(あい)さん、あずと君の3人家族。 敦さんと藍さんは知人からの紹介で、10年ほど前に知り合ったのだという。
奥様の藍さん、ずっと料理関係の仕事をしてきたんだとか。
「小さい頃からお菓子作りが好きでした。進路を考えた時も、”食”について学びたいと思ったので、栄養士の資格を習得しました。この料理道具は、10代から使っているものです」
シフォンケーキやハートの焼き型、丸棒やスケッパー。20年ものの料理道具、かっこいいですね。
「洋食屋さんや料理教室で働いていたときも使っていました。今でもお菓子作りをするときに使いますね。昔から食いしん坊なので、家にいるときも食べたいレシピを探して、よく作っていました。実家には料理の本が山積みになっています。今も美味しそうなもの、食べたいものを作るのが趣味かも。ただ、レシピ本通りに作るというよりは、すこしオリジナルを加えて。作った時の気づきや調味料のいい塩梅などはノートに書き溜めています」
料理人の知恵とアイディアが詰まった、秘密のレシピブック。藍さんが美味しいごはん作りにかけるこだわりは並々ならぬものだ。ご主人の敦さんのお気に入り料理も聞いてみたいな。
「なんだろう?何を食べてもだいたい美味しいなと思います。とにかく“うまそうなもの”を作ってくれますね!」
うまそうなもの! いやはや、気になってきました。
「最近はあまり作れていないけど、私が生地と具を作って、敦さんが皮を丸く成形して、2人で包む”手作り餃子”が2人の大好物だったかな」
藍さんが教えてくれました。生地から作る手作り餃子、とっても美味しそうだな。
「あずとが生まれてからは、お味噌汁を作るにも、ちゃんと出汁を取るようなところから大切にするようになりました。基本に立ち返って、本当に美味しいと思えるものを手作りしたいなって。最近は和食が多いかもしれません。お菓子も手作りするようになりましたね」
顔マークがついたかわいいのはメープルシロップ味のクッキーで、右手にあるのが青のりを練りこんだクラッカー。メープルシロップ味の方は全粒粉、青のり味の方は小麦粉と水、塩、油だけ。とてもシンプルな材料で作られている。
「私たちが食べるケーキとか、あずともやっぱり食べたがるんですよね。かわいそうだけど、まだ早いので、あずとにはお菓子を手作りするようになりました。このクッキーはバターとか卵とか上白糖とかは使っていないんです」
ほのかな甘みと香ばしさが口の中に広がって、とっても美味しい。ちなみに藍さん、器を手作りするのも趣味なんだそう。
「自分が作ったお皿で、自分が作った料理を食べたいなと思ったのがきっかけですね」
自分で釉薬を流した手作りの陶器。ごはんを食べるときの美味しさも一味違ったものになりますね。
一方の敦さん、お仕事はバネを製造するエンジニア。バネの工作機械を動かして、自動車部品や住宅設備の内部に使うバネなどを作っているんだそう。0.01mm単位で紡ぎ出される職人の手仕事だ。敦さんは、昔から機械いじりが好きだった。
「小さい頃から機械を分解したり組み立てたりするのが好きでした。母方のおじいさんも大工さんだったし、もの作り好きの血が流れているのかもしれません。学校では図画工作が好きで、中学生くらいまではプラモデルやラジコンの制作に熱中していましたね。今でもおもちゃ屋さんに行くと、ついつい見てしまいます(笑)」
そんな敦さん、20代からの長年の趣味があるという。
「バイクが趣味ですね。1990年代から2000年代にかけて、バイクレースのWGP(現・MotoGP)で日本人の選手がとても活躍していたんです。その頃、レースでAprilia(アプリリア)社のバイクが走っているのを見たんですが『なんてカッコイイんだろう!』って思いました。Apriliaはイタリアのバイクメーカーですが、世界チャンピオンになった日本人選手も乗っていて。『あのイタリアのあのデザインのバイクに乗ってみたいぞ!』と思い、すぐさま中型二輪免許を取りました。そのあと大型二輪免許も取りましたが、結局Aprilia以外乗っていません…。これからもこのバイク一筋だろうな」
バイクとの出会いについて、目をキラキラ輝かせて話す敦さん。まさに一目惚れだったんでしょうね。
「単純に、走る姿やバイクの形などの見た目に惚れたという感じですね。『レーサーレプリカ』という、レースバイクに似せて作られたものなので、スピードが結構出るんです。怖いなって思うこともありますが(笑) 一人でぶらっと走りにいくのが好きですね。雰囲気を楽しむって感じです」
敦さん、バイクのメンテナンスは基本的にご自身でおこなっているのだそう。
「ほとんど自分でいじれるので、ここはプロに頼まないとダメだなという部分以外は、自分でメンテナンスしています。カスタマイズも楽しくて、ブレーキやエンジン内部などもちょこちょこ手を加えています。性能が上がるのも嬉しいですが、カッコ良くなるのが一番の醍醐味かな。まあ、見た目重視ですね(笑)」
料理作りにバイク、それぞれに熱いこだわりを持っている藍さん、敦さん。自分たちの打ち込む好きなことについてお話をしているときのお二人は、とっても楽しそうだ。こっちまで趣味の世界に引き込まれそう! そんな佐久間さんご夫婦、普段の休日はどんな風に過ごしているのだろう。
「私たちの家には薪ストーブがあるので、最近は薪割りしていることが多いかな。ただひたすら、2時間くらいぶっ続けで薪を割っています! 薪ストーブを買ってから、チェーンソーの使い方も習いました」
薪割りにチェーンソーまで使いこなすとは、本格的だな。燃料作りは敦さんの仕事なんですね。
「昨年も、薪ストーブで越冬だ! と必死で薪を作っていました。基本的に、薪は乾燥していないと使えないんです。1年以上は乾燥させないとだめらしいですね。なので次の冬のためには前年に薪を蓄えておく必要があるんです。木はクヌギやコナラなどの広葉樹をを集めるようにしています」
来年のための下ごしらえが必要なんですね。
「薪は、木を伐採している人に声をかけて、分けてもらったりしています。クヌギやコナラが育つ雑木林では、クワガタが捕れるんですが、クワガタも好きなんで、薪探しは一石二鳥ですね! 薪を庭に置いといて、クワガタが卵を産みつけに来てくれたら嬉しいな。あずとがもう少し大きくなったら、一緒に雑木林に出かけたいです!」
親子二人で薪とクワガタ探し。今からワクワクするな! 藍さんの休日も聞いてみたい。
「私も薪割りすることがあるんですが、結構おもしろいですよ! あと、最近楽しいのは、野菜づくりです。今は、茄子、トマト、シソ、ネギ、バジルを育てています。ミニトマトは初めて実がなりました。あずとと一緒に収穫したいですね」
薪探しに野菜作り。新しい家での暮らしを満喫している佐久間さんご一家。この家を建てたYutakaとの出会いについても話を聞いてみたい。
「実は小さい頃から、Yutakaのことは知っていたんです。川で魚捕りをしていたとき、近くにYutakaの作業場があったので、なんとなく頭の片隅にはあって。すぐ問い合わせようということにはならなかったのですが」
とは敦さん。子供の頃に見た作業場の記憶からYutakaを知ることになった。ひょんなきっかけですね。
「新居は、とある住宅メーカーにお願いすることがほぼ決まっていました。高品質な注文住宅を低価格で建てられるという噂も聞いていたので。そんな折、頭の片隅にあったYutakaをふと思い出しまして。何の気なしにインターネットで検索してみたんです。ホームページを読んでいると、地元・埼玉で育った材木である西川材を使った家づくりをしているということを知って、興味が湧きました。それで、ちょっと話を聞いてみようかということになりました」
西川材に興味を持ったんですね。
「最初は私一人で話を聞きに行きました。そのとき対応してくれたのは安食さん。会ってその日に、家づくりに対する自分の考えを話しつつ、安食さんの話も聞いたりなんかして。その場でいきなり盛り上がっちゃいましたね。その際、気になっている土地があることを話したんですが『今から見に行きましょう』と声を掛けてくださって。すぐに車を走らせて、一緒に土地を見に行きました。結局その土地は買わなかったのですが、なんか熱いぞ! そのノリ、好きだなって思いました(笑)」
その後、Yutakaで家を建てたOB宅の見学会にも訪問を重ね、OBとの交流を深めていった。そうこうするうちに、家作りに対する価値観がガラッと変わっていった。
「薪ストーブがある家とか自然を感じられる家とかいいなぁって。畑があるのもいいし、泥がある庭もいいし。OBさんの暮らしぶりには私たちの憧れがつまっていました」
とは敦さんの印象。藍さんはどうだったのだろう。
「私もYutakaに出会うまでは薪ストーブがある暮らしなんて全然頭になかったんです。OBさんのお家の見学会に伺ったことがきっかけになり『やっぱり、こんな自然と触れ合う暮らしがしたいな』と再認識しました。家庭菜園をしたいと思っていた昔の記憶もよみがえってきましたね。でもまさか、薪ストーブがある家に住むことになるとは夢にも思いませんでしたが(笑)」
Yutakaで家を建てたOBとの交流の中で、心の奥底で眠っていた本心に気づかされた。
「この家を建てたあとに『藍ちゃんらしいお家だね。夢が叶ったんだね』って、友人から言われたんです。結婚当初、『敦さんがバイク好きだから、バイクが置けて、広い庭があって、ピザ釜なんかもあるようなお家に住みたい』って、話していたそうで…。自分が描いていた理想が、まさに現実化したなぁと思います。素直に嬉しいですね!」
お庭で野菜づくりに、薪で暖を取るスローな暮らし。自分たちらしい気持ちいいお家、本当によかったですね。あずとくんも今日一日、とっても楽しそうでした。 最後に、敦さんと藍さんがこの家でやりたいことを聞いてみた。
「ハンモックを掛けて、あずとと一緒に遊びたいですね。ゆらゆら揺れたら楽しそう!お昼寝するのも気持ちいいだろうな」
とは藍さん。あずとくん、きっと夢中で遊んじゃうだろうな。親子でハンモック、楽しみですね。敦さんは、
「“男の隠れ家”みたいなものに憧れがあるんです。将来的にはガレージを作って、バイクを触ったり、機械いじりをしてみたり、好きなことができるスペースを作りたいなと思っています。あと、家とガレージの上を行き来できるようにしたいなぁと。設計担当の岩澤さんに相談したら、面白がってくれて。『2階の窓を出入り口にして行き来できる秘密の“空中回廊”みたいな通路を作ったら面白そうじゃないですか?』って提案してくれたんです。まだ実現できてないですが、将来を見越して大きな窓にしてもらいました。楽しみですね」
2階から1階へと続く空中回廊。とっておきの秘密基地、ワクワクしちゃうだろうな。趣味を愉しむ男の隠れ家、実現するといいですね。
(2016/5/22 取材・執筆/それからデザイン)
佐久間邸 DATA
所在地 | 埼玉県狭山市 |
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お引き渡し日 | 2015年4月 |
家族構成 | 夫婦+子供1人 |
こだわりワード | オール国産材、薪ストーブ、吹き抜け、庭で野菜作り、西川材 |