Yutaka

tel. 04-2953-2379
facebook twitter instagram

Woody Days

ホームWoody Days蛍を探しに行こう

木とともに暮らす日々Woody Days

蛍を探しに行こう

取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介

梅雨を目前に控えた6月某日。
真紅色の曼珠沙華で有名な巾着田のある埼玉県日高市にやってきた。

周囲は鬱蒼とした木々で覆われている。遮るものが何もない空とのコントラストが美しい。
近くに車を停めると、元気のいい犬の鳴き声が聞こえてきた。

高麗川にかかるドレミファ橋からほど近い場所にある椙田(すぎた)邸だ。
その家は周りの景色と溶け込み、ただ静かにひっそりと佇んでいた。

4月に完成したばかり椙田邸。ご主人・和弘(かずひろ)さんは愛犬・イーグルとの二人暮らし。平日は実家でご両親と暮らしているが、週末になるとこの家にやってくる。誰にも邪魔されることのない、特別な別荘みたいな感じだ。
和弘さんのご職業は自衛隊の事務官。高校卒業と同時に今の仕事に就いたそう。事務官ってどんなお仕事なんだろう。

「まず自衛隊というと、一般的には国防の最前線で活躍する“自衛官”のほうをイメージするかもしれませんね。でも私の仕事は事務官なので裏方側のお仕事。自衛官たちが働きやすいように、人事や広報、会計や管理などを行うのが事務官の役割です。今は、ちょっと特殊ですが、装甲車の修理やメンテナンスを外注に依頼するために取りまとめたり、書類を作成したりする仕事を担当しています。特殊な仕事なので、なかなか説明しづらいですね…。事務官と言っても仕事の幅は広いですし、3年毎に転勤があるので、全国各地でいろんな仕事をしてきました。広報の仕事なんかもやりましたね」

自衛隊は、自衛官と事務官に分かれているなんて初めて知りました。
自衛隊の広報も、とても興味深いですね。どんなことをするんだろう。

「広報は、市民の皆さんに自衛隊を知ってもらうお仕事です。そのためのイベントや催し物の企画を行うのが主な業務ですね。駐屯地を解放して盆踊りをやったり、音楽隊のマーチングバンドによる音楽演奏を企画したり。マーチングバンドは、武道館でも演奏するのですが、圧巻ですよ! とても感動的です。佐賀に駐屯していたときは、佐賀城の築城400周年記念で、自衛隊の航空機を城上に飛ばす企画を実現したこともありました。普段ではなかなか出来ない、面白いイベントでしたね」

佐賀城の目玉イベントもさることながら、武道館で開催されるマーチングバンドによる演奏は、毎年11月頃に開催される自衛隊最大の音楽イベントなんだそう。腕利きのメンバーによる演奏ということもあり見応え満点だとか。ワクワクするイベントが盛りだくさんですね。
そんな和弘さん、仕事のかたわら続けている長年の趣味があるという。

「ゴルフを長年やっています。20代から始めたので、かれこれ30年くらいは続いているでしょうか。最近は、腰を痛めたので行けていませんが、月1くらいのペースでゴルフ場や打ちっぱなしに通っていました。ずっと打ち込んでいる趣味ですね。職場の仲間といくことが多いかな」

ゴルフ歴30年とは大ベテランの和弘さん。ずっと飽きずに楽しめる趣味があるっていいな。家で練習できるよう、柔らかいスポンジ製のボールでスイング練習もやるとか。ちなみに最高スコアってどれくらいなんですか?

「最高スコアは82です。本当は70代のスコアを出したいんですがね。まだまだですね…。伸び悩んでいます」

まだまだとはおっしゃるものの、すごい腕前ですね! どんな風に練習に励んでいるんだろう。使っているゴルフクラブも気になりますね。

「ゴルフクラブはFOURTEENです。羽のマークのデザインが気に入っています。FOURTEENはモデルチェンジをあまりしない硬派なブランドなので、ほとんど買い替えはせず、これだと思ったクラブを長年愛用していますね。ゴルフの練習では、このクラブの性能を最大限発揮するにはどうすべきかを考えています。自分に合ったゴルフクラブを選ぶのではなく、“クラブに合わせて自分自身をどう鍛えていくか”が課題ですね。100メートル飛ばせるものがあっても、まだ80mしか飛ばせないとしたら、まだまだってことですよね」

和弘さん、ストイックだなぁ。まだまだ高みを目指しますね。憧れの70代スコア、打ち出せるといいですね。ところで、愛犬・イーグルとの出会いも聞きたいな。

「6年ほど前に、私の母が脳梗塞で倒れたんです。軽い痴呆になってしまったこともあり、何か母のためにできることはないかと考えました。脳に刺激を与えるという意味では、動物と触れ合うのがいいと聞きまして、犬を飼ったらどうかという話になりました」

そんな折、父の知り合いの家で柴犬が生まれたというので1匹譲ってもらうことになった。

「それがイーグルです。なぜかぐんぐん大きくなって、ご覧のとおり、柴犬より勇ましい(笑) たぶん柴犬と大型犬のMIXなんだと思います。 ちょっと狼っぽいスマートな顔つきが好きです」

野性的で凛とした雰囲気のイーグル。毛並みや眼光、立ち姿など、内に秘めた雄々しさが感じられる。初めて会った私たちには警戒気味だったが、和弘さんのいうことはよく聞いていて、信頼関係で結ばれているようだった。ちなみに、“イーグル”の名付けの由来はもしかして…?

「ゴルフの上がりの“イーグル”が由来ですね!以前飼っていた犬も同じ名前だったので、イーグル二号になるかな」

ゴルフ好きの和弘さんらしいネーミングだな。勇敢な印象のイーグルにも、しっくりとなじむ名前だ。イーグルとのお散歩コースも聞いてみた。

「近くに日和田山や物見山などの小さな山があるので、そこに登ることが多いですね。自転車で往復2時間かからないくらいのコースです。イーグルは尋常じゃないくらいタフなんですよ。狼じゃないけど本当に野性的だなって(笑) 全然バテなくて、休まずに走り続けるんです。私のほうがバテちゃう。いいコーチですね!」

愛犬・イーグルとの楽しい週末を過ごしている和弘さん。この家で始まった楽しみが他にもあるという。

「畑を耕して、野菜作りを始めました。新しい趣味ですね。茄子、きゅうり、ピーマン、ゴーヤなどの夏野菜です。将来的には、もっと畑を広げて、自給自足的な生活も憧れるな。 ただし、植えれば実るというわけではないので、日々勉強が必要ですね。少しずつ覚えていければいいかなって感じで、楽しみながらやっています」

椙田邸で育つフレッシュな夏野菜。グリーンに色づきグングン成長中だ。ピーマンは小ぶりな背丈ながらも、美味しそうな実をつけていた。ところで和弘さん、土づくりも大切になさっているそうですね。

「美味しい野菜作りには良質な堆肥を作ることが大切だと思います。ここは、もともと野菜づくりには適さない場所でしたから、土壌づくりから始めました。堆肥は山で落ち葉を拾ってきたものをビニール袋に入れて、米ぬかと水を入れて発酵させます。1週間くらいでいい感じに仕上がりますよ。イーグルと山登りするときは、堆肥になる落ち葉を探しにいきます。敢えて肥料は買わずに、時間をかけてじっくりと手作りするのが楽しいですね。失敗を繰り返しながら、ちょっとずついいものを作っていけばいいんじゃないかな」

化学肥料に頼らず、野菜が育つ土壌改善から始めた和弘さん。堆肥を手作りするところから始めるなんて、野菜作りひとつにもこだわりを感じますね。フレッシュな夏野菜、たくさん収穫できるといいですね。

イーグルとの山登りに夏野菜づくり。和弘さん、思い描いていた理想のライフスタイルを謳歌されているようだ。こんな暮らしをしてみたいとか、あんなお家に住んでみたいなど、理想の暮らしに対するイメージがあったのかな。

「私の頭の中には、当初から“田舎暮らし”というキーワードがありました。菊地桃子さんがナレーションやっている『人生の楽園』っていうテレビ番組があるでしょう。あんな暮らしをするのが憧れだったんです。自分でもしょっちゅう理想の家のイメージを紙に描いていました。土地探しも、自分の理想をトコトン追求しました。結局、ここに決まるまで3年くらいかかったかな。イーグルの散歩がてら、気になる土地があると、不動産屋さんに声をかけては聞いていましたね」

まさに人生の楽園を実現していますね。自然体の和弘さんとこの家での田舎暮らしはとても合っているようだ。ちなみに、お話の中にあった理想の土地の条件は、周辺が静かで田舎らしい風情があること、できれば川が見下ろせるところなどだった。この場所はもともと養鶏場だったが、それが取り壊されるというのを知り、タイミングを得て土地の購入に成功したのだそう。そのとき、土地の仲介を担当してくれた不動産屋さんがYutakaを紹介してくれた。

「田舎暮らしがしたいならYutakaさんが良さそうだよねって。そんなこんなで、Yutakaの設計担当の岩澤さんにお会いしました。私の場合、自分が住みたい理想の家のイメージがある程度固まっていたので、その話をとりあえずぶつけてみたんです。落ち着いた和の空間があって、リビングは広めで、犬を飼いたいんだ、みたいな感じでね。囲炉裏で魚を焼きながらお酒を飲みたいなんてことも伝えました!」

自分の頭の中にずっとあった田舎暮らしのイメージ。絵に描いてみたり、想像を膨らませたりしてきたが、いざ伝えるとなるとうまく伝わるだろうか、少し不安もあったという。その数週間後、設計図が仕上がったとの連絡がきた。

「岩澤さんの設計図は、自分がこうしたい、ああしたいという要望を、しっかりと落とし込んでくれていました。長年思い描いていた理想の家、それ以上のものでしたね。私の要望をそのまま図面に落としたというよりは、プロの視点でうまい具合にバランスを整えてくれた感じです。当初、土台から壁まですべて木でできた家をイメージしていましたが、岩澤さんからは漆喰の壁にすることをご提案くださいました。茶色い木と白い漆喰のコンビネーションが見事だなと思いましたね。漆喰は壁紙じゃないので、手で仕上げた風合いが出るんです。私の要望をそのまま設計図に落としこむこともできたでしょうが、一歩引い“プロの視点”や岩澤さんの感性を吹き込んでもらったのがよかったんです。仕上げのセンスなどはほとんどお任せしました」

結局、最初の顔合わせからその翌月には最終的な設計図がほぼ仕上がったという。それからトントン拍子で施工が進み、翌春の4月に待望の椙田邸が完成した。

「実家が飯能なんで、この家からほど近いんですが、40年前見た景色と変わらないんですよね。転勤続きの仕事人生で、なかなか地元に帰ってこられなかったんですが、自分が小さい頃から見てきた山の稜線を見て『ああ、帰ってきたんだな』って思いました。昨日たまたまイーグルを連れて川際を歩いていたら、そこら中にホタルが溢れていて、すごく感動しました。この家の近くに行けば蛍に会える。つくづく、この家に暮らせてよかったなって実感します」

小さい頃に見てきた山々の稜線。暗闇にほのかに光る蛍たちとの遭遇。思い描いてきた田舎暮らし以上の感動が、ここにはあった。 最後に、和弘さんが将来の夢を語ってくれた。

「イーグルの仲間として、もう1匹犬を飼いたいなと思っています。2匹を引き連れて、日和田山に登れたら楽しいだろうな。定年後に過ごす最後の場所としてここを選んでいるから、長い目で、のんびり楽しく過ごしいきたいですね」

(2016/6/4 取材・執筆/それからデザイン)

椙田邸 DATA

所在地 埼玉県日高市
お引き渡し日 2016年4月
家族構成 ご主人+愛犬1匹
こだわりワード オール国産材、蛍に会える家、漆喰

お問い合わせ・ご相談など、
お気軽にご連絡ください