Yutaka

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Woody Days

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木とともに暮らす日々Woody Days

花咲く頃

取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介

練馬区江古田駅で電車を降り、一軒家の並ぶ住宅地を歩いていく。池袋駅から電車で5分ほどの場所とは思えない、落ち着いた住宅地が広がっていた。
可憐な金鳳花(きんぽうげ)の花が揺れる、可愛らしい表札のお家が見えてきた。小泉邸だ。 ウッドデッキのベランダには、草花が風にそよいでいる。笑顔のご夫婦が出迎えてくれた。

 

夫の泰男(やすお)さんは、高校で地理を教える先生。大学を卒業されてからずっと同じ学校へお勤めのベテランだ。25年近く、地元のボーイスカウトの活動もされている。

朗らかな笑顔の奥様、陵子(りょうこ)さん。今でこそご主人と静かな二人暮らしだが、少し前まで3人のお子さんと、義理のご両親の7人家族を毎日支え続けてきた。
20年ほど前に、お仕事先でフラワーアレンジメントに出会い、自宅でお教室を開いている。今日も玄関には、美しいお花が飾られている。

 

家の中に一歩入ると、思わず深呼吸したくなるような心地よい空気を感じた。
「さわやかな空気ですよね」と奥様。
「壁もそうなんです。この建物、無垢の木と漆喰がこうやって吸ったり吐いたりしてくれるんだろうね」とご主人。

普通の家との違いは、初めて Yutakaの家に見学に行った時から感じていたそう。

「埼玉の巾着田のお家を見に行ったんです。スリッパを履かずに直接歩いた瞬間に『うわっ!違う』って。家の空気は夏なのに凄くさわやか。これはすごい!と思って。主人はこの無垢の木が汚れたらどうしようとか、壁が汚れたら壁紙じゃないから張り替えられないし、メンテナンスの面でどうなのかなと言っていたんですけど、あまりの気持ちよさに『これは絶対いいよ』って説き伏せて」と語る陵子さん。

几帳面で思慮深いご主人の泰男さん、実は当初、家をきれいに維持できるのかが心配で、無垢材で家を建てることには気が進まなかったそう…。
「主人は話が進んでいる間も、『これはどうなの?』『汚れちゃうんじゃない?』と心配していたんです」
「無垢材の家って、手入れがしづらいんじゃないか、と思って」と泰男さん。

実際に暮らしてみて、どうでしょう。気になるところです。

 

「それが、今までの床と全然違う。階段を上がるでしょ、リフォームしていない2階の廊下は、もう最初の一歩を踏んだ瞬間にペタッとした感じがしちゃうんです。無垢のフローリングにした1階のさらっとした感じとは全然違う」

素足で歩いた時の感覚が全く変わったのですね。
「そう、それに埃がたまらない。以前は椅子の足裏につけたフェルトの周りに埃がたくさん付いて、毎回掃除機で吸い取っていたの。それがまったくなくなっちゃった。テレビにも埃が付かなくなった」
「今では私より気に入っちゃって(笑)。毎日、部屋を眺めては『いいな~』とか」 と、陵子さん。

無垢材のフローリングは、きれい好きな泰男さんのお墨付きをいただいたようだ。

小泉邸のあるこの土地とご家族のお話は、ご主人泰男さんの祖父母が家を建てた50年前まで遡る。豊島園の近くで生まれた泰男さんは、小学1年生の時に、ご両親とこちらに移り住んできた。

「陵子さんと結婚後は、マンション暮らしをしていたが、長男・圭理(けいすけ)さんが生まれることをきっかけに、またご両親の暮らす今の場所へと戻ってきたそう。
続いて、長女・友里(ゆり)さんが産まれ、次女・光希(あき)さんがお腹にいる27年前に、今回リフォームした家を建てたのだそう。

「この家では、両親と僕ら2人、子ども3人の合計7人で暮らしてたわけ。その時の設計は女房がしたんです」
奥様がお家を設計されたのですか!驚きです!
家族のことを考えながら、方眼紙に何枚も何枚も設計図を書いた陵子さん。それを元に、大工さんに建ててもらった愛情の詰まった家だ。

今回、リフォームをすることを決めた際も、当初はその大工さんに依頼したが、なかなか話が進まずにいた。そんな時に、娘の光希さんからの紹介でYutakaの見学会に行くことになったのがきっかけとなった。

実は、この次女・堀内光希さんは、昨年埼玉県日高市にYutakaでご自宅を建てられたばかり。
陵子さんは、完成したそのお家に驚きを隠せなかった。
「光希が暮らしている家が、本当にもう私が結婚した当初から夢描いていた家そのものだったんです!自然豊かで、ウッドデッキがあって、薪ストーブがあって…。そんな理想の家の話なんてしたことがなかったのに、なんで私がやりたかったことと娘たちの家は全部同じなんだろうと!」
理想の家を実現している堀内邸。それを目の当たりにした陵子さんはYutakaのスタイルが自分にあっていると確信されたそう。

光希さんのご主人・堀内達也さんは、芸術肌で直感的な光希さんとは対称的に、熟考して徹底的に調べ尽くすタイプ。
その達也さんのすすめということもあって、泰男さんもYutakaに会うことを決めた。

ご主人が奥様に一目惚れしたこと、大学を出てすぐ結婚したこと、そして3月30日が結婚記念日なことまで…。
泰男さん陵子さんご夫妻と、娘の光希さんご夫妻は、「偶然」の一言では済ませることができないような素敵な共通点が多い。

今回のリフォームも陵子さんが図面を描くことから始まった。

当初、お二人が考えていたのは、間取りの変更と、階段と屋根を直すことだったそうですが?
「『どうせやるならこうしよう』というのが、どんどん増えていって。耐震性をYutakaさんにチェックしてもらって基礎を作り直したり、台所は女房が一生懸命仕事するところだから、ステンレスよりこういうやつにしようとか」

生活する中で新しいアイディアが出てきたら、その都度陵子さんが図面を引き直し、泰男さんが作成したリストを元に、Yutakaの高木さんがお二人の希望を取り入れ、図面を精緻化して提案していく、という二人三脚が続いたそうだ。

「この家を建てて、例えばこの引き戸一枚をとってみても、主人がやっぱり汚れるからって言って、手が当たる所は全部かまちを付けてもらったり。ひとつひとつ全部Yutakaさんに相談して、それを全部受け入れてくれて、一生懸命一生懸命考えてくださって」と陵子さん。

「この間、棟梁が点検に来てくださって嬉しくて!高木さんにも会いたいんだけど忙しいでしょうから、毎日『どこか不具合はないかな』と探してみたり…(笑)。なにかあれば来てもらえるかな、なんて毎日見ているんだけど、どこも悪いところがなくて、電話もできないの(笑)」 お家の完成後も会いたいなんて、Yutakaの皆さんが聞いたら喜ぶでしょうね。

「Yutakaさんがすごく素晴らしいので、大工さんも、電気屋さんも、屋根屋さんも、建具屋さんも吸い寄せられるようにいい方々が集まるんでしょうね。建設中、お休みの日によく見に来たんですけど、仕事の後は毎回綺麗に掃き掃除してあってね。いつ来ても」
「散らかってない。かんな一つとかさ。道具がやりっぱなしとか。計画の時から完成するまで、不満がまったくなかったもんね」
泰男さんも感心された様子。

ところで、素敵なガラスやタイルが随所にあしらわれているのですが、元々使いたいと思われていたのですか?

「ガラスとタイルは元々とても好きで、Yutakaさんにカタログを見せてもらった時に、『わぁ、素敵』と感激して、一つ一つ選びました」 と、陵子さん。

実は陵子さん、リフォーム工事が始まって間もなく、乳がんが見つかり手術を受け、2か月ほど入院治療をしていたそう。
その間も、大好きなタイルを選んだり、新しい家での生活を考えたりすることが気持ちを前向きにしてくれた。
「Yutakaの皆さんもすごく心配してくださって、でも明るく接してくださって。タイル選びとか、新しい家のことを考えていたおかげで、入院中も悲しんでいる暇がなかったというか。絶対に治ってこの家に住むんだ、っていう思いが生きる希望になって」

闘病中に、ご夫婦でショールームに行かれた。その時にもらったタイルとガラスの見本を、陵子さんは今でも宝物のように大事にしている。

「これが扉、こっちが食器棚の。このトイレのタイルは、光希の家でも同じものを使っているんです。後から、真似っこじゃないのって笑い話にできるんじゃないかと思って」
絶対治す、治すことしか考えなかったと陵子さんは言う。

リフォームの始まりから完成してお引越しするまでの時間。それは病との闘いの時間でもあったんですね。
「毎年、二人で桜を見に行くんですけど、入院前のお彼岸はいつもの石神井川沿いはまだ咲いていなくて」
「主人と二人、歩いて歩いて。やっと一輪『あっ、咲いている!』と。桜の小さな花を見つけたんです」
ご主人の泰男さん、どうしても陵子さんに桜を見せたかった。
「その後、主人は私を新宿御苑まで連れて行ってくれ、早咲きの桜を見せてくれたんです」

そして、この小さな桜の花は、さらなるサプライズをお二人にもたらします。
新宿御苑から仮住まいに戻るとイタリアに留学中の長女・友里さんがこっそり帰国して、二人の帰りを待っていたそう。
そこからは友里さんが毎日病院に通いお手伝いをしてくれたり、次女・光希さんが、泰男さんが修学旅行で家を空けている間、孫の花ちゃんを連れて泊まりにきてくれたり。

そういうご家族を築いてこられたお二人です。

「主人が毎晩、食器を洗ってくれるんです。流しまで全部綺麗に。このお家ができて、家族のありがたさが再確認できました。家が新しくなって嬉しいだけじゃなくて、家族みんなが仲良く思い合って暮らせるっていうのが一番ありがたいことです」と陵子さん。

「夜、帰って家が見えると、オレンジ色の表札の明かりが付いてるわけよ、ぽっかりとね。それもいいな」とご主人。

「二人で暮らす、ということを考えて設計してもらったので、今の暮らしに合っていますよね。使い勝手も良くなって。階段も1段増やしたんですよ。勾配を緩くしてもらって。楽になりましたね。全然違います。玄関にも手摺りを付けてもらって、これから先、永く住めますね」と、泰男さん。

祖父母の時代から、その時の家族に合わせて家も形を変えてきたように、小泉さんご家族も、また新しい章が始まったよう。

さあ、そろそろ花が咲く頃。
ベランダで草花の手入れをする陵子さんと、リビングでくつろぐ泰男さん。子どもたちやお孫さんが、たまに遊びに来たりして。
子どもたちが巣立った後も、それぞれが自分らしく、仲良く繋がっている小泉さんご家族。
この当たり前でかけがえのない日常がどこまでも続いていきますように。

(2017/10/8 取材・執筆/それからデザイン)

小泉邸 DATA

所在地 東京都練馬区
お引き渡し日 2017年5月
家族構成 夫婦
こだわりワード 西川材,リフォーム,無垢材,漆喰,

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