木とともに暮らす日々
ビビビと響き合う、出会いの家
取材・執筆/それからデザイン 写真/杉能信介
「ただいまー」「おかえりー」。
秋の夕暮れに、リビングからこぼれるやさしいオレンジの灯り。
キッチンでは、あたたかな夕食の準備が進んでいる。
そんな風景がしっくりと馴染む家が、埼玉県日高市にありました。
川越線・武蔵高萩駅から歩いて10分と少し。
緑豊かな気持ち良い場所に、煙突と黒い外壁が美しい楢﨑さん邸。
目の前は、青々と広がる自然公園。静かにゆるりと流れる川のせせらぎ。親子で大好きな自転車を思いっきり楽しめる空間が心地よく広がっている。
Yutaka styleの家に住みはじめて1ヶ月ほどの楢﨑さんご一家。
ご主人の雅也(まさや)さん、奥様の志保(しほ)さん、晴斗(はると)くんの3人家族です。
雅也さんはWebデザイナー。
高校・大学時代は自転車選手として活躍。競技を離れた今は趣味で走り続けているそう。
現在の家から職場までは9.4km、最速で18分で行き来しているということだから、時速約30km!かなりの高タイム!?
「父が自転車競技の指導者だったこともあり、自転車競技に本格的に取り組んでいました。通っていた高校には自転車部がなかったので、それなら自分でつくってしまおうと。
そして、自転車部創部のニュースを校内放送してもらったのですが、それを読んだのが妻の志保だったんです…」
お二人は、宮崎県出身。そして実は高校時代の同級生。
朗らかな笑顔が印象的な志保さん。当時は放送部に所属していたそう。
未来のダンナ様のニュースを読んでいたなんて、運命を感じます。
「幼稚園の頃から、朗読が好きでした。小学生の時には放送部に抜擢されて。それ以後、部活は放送部、大学でも放送研究会に所属していたんです」と志保さん。
今ではイベントMC、ウェディングの司会など、幅広く“声の仕事”をされているそう。
志保さんに、雅也さんのことを聞いてみよう。
「どんな人とも心を通わせる、“人と仲良くなる天才”なんです。お客さんにもいつの間にか“ならちゃん”って呼ばれていたり」
「そこは得意ですね(笑)。“友だちをつくる”という仕事があれば、天職だろうなぁと思います」と雅也さん。
お二人とも、さわやかな笑顔でハキハキと答えてくれる。そんなナチュラルなお人柄に、きっと周りのひとが自然と心を開いてしまうのかな。
多感な10代を同郷の宮崎県で過ごされた雅也さんと志保さんは、必然的に感性も共通しているようです。
「休日は家族でバーベキューを楽しんでいます。近くの川など、バーベキューができる場所を探すのが、私たちの楽しみ。
東京では許可された施設でないとできませんが、日高には自然豊かな場所がたくさんあります。ここに住んでよかった!と思えることのひとつです。
もともとは、実家でも、毎週バーベキューを開いていました。地鶏の炭火焼きから始まり、メインディッシュのお肉、締めは焼きおにぎり。“お庭でバーベキューができる”というのが家を建てる時に、『絶対に外せないポイント』でした」
家族にとって、“外せないポイント”を決めておくのは、結構大切かもしれない。
気がついたら生まれ育った宮崎の地に似た雰囲気の場所を選んでいたとか。
一方、お家での楽しみ方は?雅也さんに聞いてみた。
「無垢の床にゴロンって寝っ転がる。階段の下から寝転んで見る角度を変えたり・・・寝る場所を変えて、見える新しい景色を楽しんでいます」
お家の中での見たことがない景色を探すこと。そんな風に愛おしんでしまうくらい、無垢の木の家は居心地がいいのだろう。
2階に歩みを進めてみると、オリジナルの書棚があった。読書家の一面もある雅也さん。お気に入りの本を愉しむ読書タイムも、ゴロンと無垢の床で寝転びながらだったら、さぞ気持ちいいだろうなぁ。
つづいて志保さんもお家での愉しみ方を語る。
「『今日気持ちいいからテラスにいってみよう』といってハルを誘いました。それ以来、寝る前にいつもテラスに行きたがるように。子どもも気持ちいいのがわかるんだなーって」
親子ふたり、木のぬくもりを感じながら、星空輝くテラスでの穏やかなひととき。自由気ままに寝っ転がる。ボーっとしたり、語り合ったり。
ずっとこうしていたいなぁ。
そんな風に思える、愛おしい時間が、この家では連綿と紡がれていくのだろう。
Yutakaとの出会いについても聞いてみた。
「仕事で、工務店や住宅関係の会社のWebサイトを手掛けることもありました。だから家というものに対して、自然と目が肥えていたのかもしれません。マンションという選択肢はなかったですね」
二人の理想を叶えるため、労を惜しまず工務店やハウスメーカーなどへの訪問を重ねる。楽しくもあり、苦しくもある日々だった。
「ハウスメーカーさんが提案するプランもどれもステキなものばかりでした。その中でも、設計と大工さんのバランスが良くないと自分たちの願望を満たす家づくりはできないなと。さらにディレクション(調整役)がいないと、満足できる家づくりは叶わないと気づいたんです」
もしかして、自分たちの理想が高過ぎるのかな? ワクワクすると思っていた家づくりが、徐々に足取りの重たいものへと変わっていった。
仕事もあってヘトヘトに疲れきっていたある日の夜。たまたまYutakaの名前を知り、なんとなく気になって電話してみた。今から会えるということで、安食社長と会うことに。
「設計図を見る前に、『波長が合う』と感じました。フィーリングが合うと。ブライダルの仕事もしているので、いわゆる“ビビビ!”というものを感じたんです。瞬間的に『ここにお願いしよう!』という感じで決めました」と志保さん。
出会いから1週間ほどで、Yutakaとのお付き合いが始まった。
お二人の出会いにも似た、ビビビ!な瞬間だったのかもしれない。
「大手ハウスメーカーでは希望を伝えてもできないことが多かった。『いやーそれは予算の関係で…』の連続。Yutakaは違いました。『そうですか、ではまず考えてみましょうか!』から始まるんです」と雅也さん。
理想を実現する。使い古された言葉ではあるが、できないと諦めていたことも、Yutakaならできるかも。そんな想いは、見事に実現していった。
また、Yutakaの真っ直ぐな姿勢が伝わったとも言う。
「言えないことがない関係でした」
まるで夫婦のような一言だなぁ。
大事な部分が共有できていたからこそ、互いの意見を率直に言い合えるし、一方的な要望を伝えるだけではない家づくりができる。
だからこそ、想像以上の家になっていく。
「引き渡しの際、思い出にどうぞと、岩澤さん(Yutaka・設計担当)と保さん(Yutaka・施工担当)が西川材でオリジナルの木の鍵つくって、プレゼントしてくれたんです!これには感激しました。」
ささやかなプレゼントは、久恵さん(Yutaka・事務担当)からも。
引き渡しのお祝いのテープカットで使う緑と茶の花メダル。とってもかわいい。
「家が完成する日は、嬉しくもあり、さみしくもあり。完成することでYutakaとの家づくりが一区切りついてしまう寂しさを感じました。」
Yutakaの人々と膝を突き合わせる機会がなくなってしまう。これ以上に嬉しい言葉があるだろうか。そういう仕事ができるって、素晴らしい。
配達で来た人が、玄関先で中を二度見して、こんな言葉を掛けられたそう。
「僕、元大工なんですけど、とってもいい家ですね!」
心地良い共同作業から生まれた、楢﨑邸。
理想がカタチになった、誰もがうらやむ家だな。
最後に、これからの夢、目標、楽しみにしていることを聞いてみた。
「この家の壁は“オガファーザー”というウッドチップの壁紙を使っています。上塗りもできるので、壁を塗り重ねてみたい。床の経年変化も楽しみ。外構は、これから手を入れて育てていきたいです」
住まうほどに愛着が増していくYutakaの家。
自然素材の壁から無垢の木の床、外構まで、ものの数年では味わい尽くせない楽しみが詰まっている。将来が楽しみで仕方ない家でした。
(2015/9/15 取材・執筆/それからデザイン)
楢崎邸 DATA
所在地 | 埼玉県日高市 |
---|---|
お引き渡し日 | 2015年8月 |
家族構成 | 夫婦+子供1人 |
こだわりワード | オール国産材、薪ストーブ、煙突、庭でバーベキュー、オガファーザー |